【当サービス代表の寄稿記事のご紹介】
本記事は、当サービス代表が医療専門誌(医療と介護 Next 2019 vol5 no.3)より依頼を受け、専門家として寄稿した「訪問個別リハビリの醍醐味」の原文を加筆・修正したものです。
※当サービスは徹底したプライバシー保護を理念としているため、執筆者名(代表名)は伏せて掲載しております。
病院でのリハビリと同じレベルの訓練を自宅で
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ご家族の献身と熱意に圧倒されて
Aさんとご主人のさんに初めてお会いしたのは、 2017年、入院中のリハビリ病院。Aさんは、車いすで院内の理容室へ行くところでした。 付き添ったご主人が理容時のサポートを本当に優しく丁寧にされていて、一目でどれだけ奥様を大切にされているのかよく分かりました。その後、病棟にてこれまでの経緯や今後の希望についてもお聞きしました。
Aさんは意思の疎通が困難で、全ての動作に介助が必要な状態。それでもとにかく前向きに、一歩でも半歩でも前にという姿勢です。18年1月に控えた退院後も病院で行なっているリハビリ、特に立位や歩行訓練の継続を希望されていました。
Aさんの歩行訓練は長下肢装具を両側に付け、後方から介助して行います。私はAさんが入院したリハ病院での勤務経験があり、以前から同じような訓練を行っていたため、訓練自体は問題がないことをお伝えしました。しかし、リハビリ室の整備された環境で行うのではなく、生活の場(自宅)でリハを行う場合は、安全上の問題から実施できない訓練もあることをお伝えしました。
ご主人もその件は了承し、その上で専門的なリハビリの継続を希望されました。その熱意に圧倒されつつも、ひた向きにAさんの回復を願う姿に感銘を受け、できる限り力になれるのであればと思い、その場で退院後のリハビリを引き受けました。
退院後はAさんの体調の変化等に気をつけながら、早い段階で装具を着用し立位訓練を実施していきました。住み慣れた家に帰り家族が側にいることで、 心身共に変化するのも珍しいことではありません。そのため四肢の反応だけでなく、わずかな表情の変化や眼球運動、時折発する声等に注意しながらリハを進めてきました。
Aさんは退院当初は閉眼していることが多く、開眼していても目に力がないというかボーッとしている印象が強かったので、リハ実施時は、とにかく声かけしながら行うようにしました。手足の可動域訓練やストレッチ時、立ち上がりや立位訓練時、もちろん歩行訓練時にも声かけをします。声かけ時には可能な限り表情等を確認するようにしました。 ご自宅での生活がある程度経過した頃、しっかりと開眼し、 目に力が入っている印象の日が増えてきました。
数値では表せない、わずかな変化を見逃さない
生活の場だからこそ起きる反応
最近では上肢の関節運動時には、Aさん自身にも一緒に動かしてもらうように声をかけます。すると伸長痛に対する反射運動が軽減、繰り返すうちに動かしたい方向への協力動作のような反応を、わずかながら感じることもでてきました。
現時点で出現している反応が、 随意的によるものなのか評価はできません。しかし、術者の感覚としては明らかに違いを感じる時があります。もちろんまだまだ不安定で、いつも反応があるわけではありません。
また、上肢ばかりでなく歩行練習時においても、変化がみられる時があります。往路時に寝室から歩行を開始し、リビングを過ぎようとする辺りで私の掛け声に合わせるように声を出すことがあります。なぜか復路では声を出したことはありません。 往路でも必ずリビングに入ってからです。これも何度か同じことが起きているため、Aさんが何かしらの反応をしていると考えています。本当にわずかではありますが、数値では表せない変化が出現していると思われます。
先日のことですがリハ終了時に「また次回も頑張りましょう」 と声かけをしたところ、大きく溜息をつかれてご主人と笑ってしまいました。
重度の方のリハビリに介入するということ
回復を信じ続ける家族の支え
重度の方のリハで、一番難しいのは意思の疎通ができない場合です。今出た反応は随意的なものか偶然なのか、判断に困ることが多くあります。そのためにも眼球運動、表情の変化、時折出す声や筋緊張の変化等、注意しながら確認します。
以前、リハを継続していくうちに意識障害から回復された人がいました。初めは偶然反応したものと捉えていましたが、偶然にしてはあまりにもおかしいと思い、改めて確認したところ。 随意的なものであることがわかりました。
その後ずいぶん時間がかかりましたが、その人の意識障害はかなり改善し、「はい、いいえ」 の意思表示ができるまでになりました。その時は本当に嬉しく、 回復を信じ続けた家族の支えに感動しました。
個人でリハビリをするようになってから、日常生活は全介助、 意識レベルも低くほぼ寝たきり状態の人のリハビリも引き受けていました。ご家族の熱心な要望により、立位訓練等を含め積極的にリハビリを行い、意識レベルがある程度改善。声を出して人を呼んだり、調子が良い時は「ハイ」と反応ができるようになりました。
ご家族からは大変喜ばれたのですが、同じチームの人から 「中途半端に回復させてかえって家族が大変になった」と言われ、まさかの言葉に衝撃を受けたことがありました。たしかに生活レベルを改善するまでには至らない変化でしたが、そのことがご家族にとっては負担になったのかと考え込んでしまったのです。
結果としてそれ以上の回復はできませんでしたが、私は更に回復を信じて、その人が亡くなる2日前までリハビリにうかがっていました。当時のことを思い出すと、今でもいろいろな考えがめぐりますが、やはり少しでも回復することを信じている人々のお手伝いを、自分なりにしていくことが大事だと考えています。
なぜ、あえて「自費」でリハビリを行うのか?
生活の質を変えるための個別アセスメント
私はリハビリを依頼されると、 身体状況をアセスメントし、一から訓練内容を考えます。特に検討するのが、①なんとなくやっているが正確ではない動作、 ②自分でやれるはずなのに人に任せる、もしくは本人以外がやってしまっている動作、③退院当初はできたのに今はできなくなってしまった動作、の3点です。
この3点のような場合こそ改善させられる可能性が高く、率先してリハビリを行っていきます。生活の質を変える程の変化がみられなくても、些細な変化の積み重ねが、やがて大きな変化につながることもあるからです。そのためわずかでも変化を期待できるところがないか、常に確認しながら日々のリハを行なっています。
私が行っているリハビリは自費となるため、介護保険でのリハビリと併用する方が多い状況です。その際も必要と思ったことをやるようにしているため、 時には介護保険利用のリハビリと同じような内容になることや、 また全く別の内容になることがあります。
しかし今現在、どうしてもやっておいた方がよい訓練、たとえば歩行なら、今歩く機会や歩行量を増やすことが重要と考えた時には、介護保険利用のリハスタッフと連絡をとり、情報交換をしながら訓練を合わせることもあります。どちらにしても、 本人とご家族に説明し、理解を得た上で実施していきます。
個別自費リハビリのメリットは、必要に応じて量を増やすことができ、また期間も制限がないため必要があれば継続が可能なところです。一方、デメリットは言うまでもなく費用です。 介護保険等に比べ費用負担が大きくなります。
奇跡的な回復を遂げる人の共通点
努力してもらうために、心を尽くして説明を
私がリハビリを行ううえで日々気をつけていることは、とにかく細かく説明しながらリハを行っていくことです。この訓練をする意味ややり方、やった上での効果判定等の説明をし、 利用者は自身がやっていることの意味を理解し、うまくできた時、失敗した時の違いを把握した上で努力することが大切と考えています。なぜなら、身体機能を生活レベルまでも変化させるためには、自身や家族の理解と、やれることをやり続ける努力が必須と考えているからです。
一番多い希望は「歩行の獲得」 です。しかしそれを実現するためには、それ以前に獲得しなくてはならない身体的機能や動作が多くあります。それを一つずつ獲得し、その結果歩行に至るということを何度も説明し、理解してもらえるように努力しています。
たとえば、入院していた病院の医師からは歩くことは無理だと言われ、車いすで生活していた脳卒中片まひの利用者のケース(発症から3年経過)では、 家族への依存度も強く生活動作のほとんどに介助が必要でした。 そのため、起き上がり、立ち上がり訓練からスタートし、本人や家族の意識も変えてもうらうべく常に説明して理解を促し、 実践してもらうように勤めました。2年後には訓練レベルですが、ご家族と介助歩行が可能となりました。
また、数年訓練を続けている高次脳機能障害の人は、昨年から今までとは違う変化が出始めました。以前は家族や他人への依存が強く、自分の動作方法を覚えず注意することも困難でしたが、現在は立位時の注意点、 坐る際の注意点を覚えることができるようになりました。動作を覚え始めたことで、失敗も人のせいではなく、自分ができなかったから失敗したと自分のこととして捉えることが可能となってきました。 目の前に出された課題に真剣に取り組み、成果を獲得しようと努力し続けることができる人が、いわゆる奇跡的な回復をされる人なのだろうと思えるようになりました。
当サービスの理念に共感していただけましたら、ぜひ一度ご相談ください。